ナゴヤドームの片隅で

ナゴヤドームでボイメンが好きになった2次オタの壁打ちブログ

英一郎君に人生めちゃくちゃにされたいの巻

ネタバレしかないので「蚕」未視聴の方はご注意ください

 

キスのカタチ「蚕」見ました…。

キスカタの存在はボイメンにハマった頃から知っていたのですがいつもと雰囲気の違う推しへの戸惑いと畏怖から視聴することを先送りしておりました。しかし新入社員として慣れない仕事に毎日揉みくちゃにされ、疲れからか、不幸にもアマプラのキスカタ蚕に手を伸ばしてしまう。キスカタ人気投票第2位の内容とは……。

 

 

 

やべえよ

 

英一郎君に人生めちゃくちゃにされたい。破滅願望しかない。

 

あの軽薄なのか深い意味があるのか読み取れないミステリアスな微笑み、それでいて俯きがちに相手の目を見ることはほとんど無い瞳、普段の改造バイクとは異なる声質から紡がれる詩的な言い回し………。

 

こわい こわいけど美しさすら感じてしまう。BGMが昔のホラーノベルのようで明るい画面でありながらどことない不気味さ。これが人気投票第2位の実力…。レビュー等でも絶賛されている理由がよくわかります。

 

絶賛されながらも一方では全く意味がわからないとも評される不思議なストーリー展開。場面もすぐに切り替わり昼間の図書館での夕子と夕焼けのカフェでのサロメさんと別々の会話シーンで展開し、一体いつの話なのか時間軸はどうなっているのかそもそもどういう意味があるのか…。そして3人が最後に出会う図書館でのラストシーン。12分という短い時間の中で目まぐるしく展開が進んで行く意味深さ。様々な解釈ができると思いますがつらつらと私が感じたことを書いていきたいです。

 

 

まず最も気になるのが「サロメ」という名前。夕焼けのカフェで英一郎と会話をしているミステリアスな女性のことを英一郎はサロメと呼んでいます。彼女も満更でもなくサロメさんは英一郎に好意を抱いているようで週末は会えるかどうかと問いかけます。サロメといえばオスカーワイルドの戯曲「サロメ」を思い浮かべます。新約聖書を元にした作品でそのエキセントリックなストーリーから人気を博し、古今東西あらゆる時代で歌劇やお芝居で上演されてきました。

 

(戯曲サロメwikiです↓)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%AD%E3%83%A1_(%E6%88%AF%E6%9B%B2)

 

これは私の解釈なのですが英一郎くんはサロメに登場する賢者ヨカナーンなのでは?と考えました。ラストのサロメさんの口づけで口紅で汚れた唇が戯曲のラストシーンのサロメが処刑されたヨカナーンに口づけをする場面を彷彿とさせます。驚愕する夕子を背景に英一郎くんは何かを悟るような、恍惚に満ちたような不思議な表情を浮かべ瞳を閉じるところでこの作品は終わります。これはサロメさんの口づけによって自らの正体を悟ったのではないでしょうか。夕子から蚕の話を聞き、桑の葉から絹を生み出す蚕と人の声音を食い書物を作りだす図書館、神の声を聞き予言をする賢者... 英一郎くんとサロメさんはそれぞれ「ここにはなんでも書いてある 昨日のことも明日のことも1000年前の出来事だって」と語ります。「サロメ」の元になったお話は新約聖書の一節です。2000年以上前に成立した物語が現代にまで受け継がれ、英一郎くんとサロメさんは出会ったのでしょう。あの口づけは狂気の愛に堕ちたサロメの時空を超えた執着のそれなのだと感じました。

 

拙文ではございましたが、ここまでお読みいただきありがとうございます。蚕は本当にすごい作品ですね。10分弱の映像にここまで解釈と妄想を繰り広げられるとは思っても見ませんでした。主演の辻本さんの普段と全く異なるキャラクターを演じ切ったプロ根性には頭がさがります。推しの暗黒面が最高だと思ってる狂人オタクなので本当に素晴らしい作品をこの世に産み出していただいて感謝しかありません。自分のキャラとかけ離れた役を演じられるのはお好きではないとのことですが辺境オタクは静かに辻本さんがまたこのような役を演じられる日を真昼の静寂に満ちた図書館で待ちわびることにします。